夏合宿とキリストと時々トトロ
2017年 10月 06日
2017年度夏合宿(縦走)
メンバー 4年 田淵
3年 中原 小林
2年 赤田
1年 白飯 吉田
8月11日(金)
1年2人がフィリピンに留学するため合宿の前半で帰京し、もう1人の1年が夏の必修授業のために遅れて合流してきた。
すなわち、1年生で合宿の全工程に参加したのは、この白飯だけである。
そして、現在もこのブログを書かされている始末である。もしも私がその筋の人間だったなら、3人の顔面をクラックにぶちこんでいたことだろう。
もし、このブログを読んで山岳部に入部しようと考えているのなら、この白飯には二重敬語を、のこりの1年にはプードル以下の扱いを許可する。
さて、本題の縦走だが、単純にきつかった。鬼きつかった。帰りたかった。もしも、グーグルで、「山 夏合宿」と検索にかけたなら、
予測変換は「地獄」と出るに違いない。
もしかして、「地獄」ですか?
とか、そんな感じだろう。
Siriもちょっとハァハァ言ってた気がした。Siri も息切れするのだ。それくらいの過酷さである。
初日は、3時に起床し、爺が岳を通り、10時40分に冷池山荘に到着した。
入山は、ひたすら登らなければならない。そのため、大腿四頭筋が悲鳴をあげるのだ。まったくもってかわいそうである。
聖母マリアなら血眼になり、その大腿四頭筋を優しく愛撫することだろう。キリスト万歳である。
しかし、山界には聖母はおろか若い女性がいない。山にいるのは、「ジジババ」だけだ。
ジジババに足を愛撫されるくらいなら、ザイルに巻きつけて足を引きちぎり、逆立ちで頂上を目指すほうがマシである。背筋がバキバキになることだろう。
どんなにに辛くても私たちは歩き続けなければならない。これは己との闘いなのだから。どんなに大腿四頭筋がつらくても足を一歩ずつ動かし続けなければならない。そうすることで鍛えられる筋肉、それすなわち、
大腿死闘筋である!!!
8月12日
この日は、鹿島槍ヶ岳、キレット、五竜岳を通り、五竜山荘に泊まった。
「キレット」って響きはちょっとかわいらしい。
「きれっと」
平仮名にするともっとかわいらしくなる。
おそらく、飼い犬にもこの名前をつけている人は多いのではないだろうか。
私はこの前、彼女とのデート中に「キレット」をかわいいと思うあまり、誤って彼女の名前を「キレット」と呼んでしまった。
当然彼女は、「誰よその女!」とブチ切れである。そのあとに予定していた映画や水族館でのサプライズも台無しになってしまった。
彼女との関係にひびがはいってしまったのだ。
キレットだけに
8月13日
五竜山荘から唐松岳、天狗ノ頭をとおり、天狗山荘に泊まった。
この日はクライムダウンする登山道が多く、死ぬかもしれないと感じることもあった。
私は今までも何度か死ぬかもしれないと思ったことがある。
私の家の近くには大きな一本杉が立っているのだが、そこを「トトロの木」と呼んでいた。幼少のころは悪いことをするとその木からトトロがやってきて懲らしめられるといわれて育ってきた。
ある時、たしか8歳くらいだった私は、家の鍵をなくしてしまった。家の鍵は絶対になくすなと耳にたこができるくらい言われていたのだが、どこを探しても見当たらないのだ。
そしてその時まず頭をよぎったのは、誰かに鍵を盗まれたかもしれないとか、鍵が悪用されるかもしれないとか、そんなことではない。
「トトロ」
の三文字である。その日から私は徹底的に自己防衛に徹した。
トトロはあの巨体だ、入れる場所は限られている。おそらく窓であろう。屋根からジャンピングプレスしてくる場合もあるがそれは手の施しようがない。お手上げである。
そこで、8歳の私は窓に「立ち入り禁止」と書いた札を貼った。我ながら天才的な発想だ。これでトトロが窓から入ってくることはないだろう。だが、トトロがいつどこからやってくるかわからないという恐怖心は8歳の私にはあまりにも大きすぎた。夜中に伊右衛門が「ポコッ」となる音も当時の私にはトトロの雄叫びに聞こえた。このようなトラウマがあり、私の脳内で「となりのトトロ」はホラー映画のカテゴリーに分類されている。
なんの話だったかというとクライムダウンはそれに匹敵するほどの恐怖だった、ということだ。
14日
この日は白馬岳、雪倉岳、水平道分岐を通り、朝日小屋のテン場に泊まった。
水平道は本来神秘的な場所だが、雨が降っていて木道で滑って転びまくった。この木道をつくった人に会ったら、正拳突きをお見舞いしようと思う。
15日
この日は朝日岳、黒岩岳、犬ヶ岳を登り、栂海山荘に泊まった。合宿後半ということもあり、朝日岳の登りはかなり辛かった。あと、満身創痍での犬ヶ岳の急登も滅茶苦茶辛かった。だが、明日でこの合宿が終わるという一筋の光明が私たちを奮い立たせた。ワンワン。
16日
ついに待ちに待った最終日だ。まず我々に大きな拍手を送ってほしい。
この日は、栂海山荘から親不知に向かった。最終日のくせに急登の登りが辛かったのと、下りで足がガクガクになった。膝が笑うを通り越し、爆笑していた。
先輩に、
「てめえさっきから何笑ってんだよ!!」
と何度も怒られたが、その度に、
「違うんですよ、これ僕じゃなくて膝が笑ってるんですよ!」
とその度に訂正をしなければならなかった。
親不知の日本海は私たちを大きな温もりで優しく包み込んだ。まるで日本海が、
「もう大丈夫だよ、もう終わったんだよ。」
と語りかけてくれているような気がした。 ベタなことを言うが、「自分ってなんてちっぽけな存在なんだろうって」って思った。「世界中のみんながもっと幸せになればいいのにっ!」って思った。
風呂に入り、帰りのバスに乗ろうとした時、どこからともなく声が聞こえてきた。
「さよ...な...ら...」
振り返ると大きな山が風に揺れていてその山は、笑っているようにも、悲しんでいるように見えた。
バスの中からみた外の景色は私たちを日常に導いてくれたが、ちょっと霞んでよく見えなかった。
1年 白飯
by hacblog
| 2017-10-06 12:37
| 合宿